生前贈与は、先に亡くなる予定の人の財産を減らして、やがて相続していく人へ財産を移していく場合が多いでしょう。実質的に財産を減らさず、次の世代へ財産を引き継ぐためには、贈与税の仕組みや特例を知ることも大事です。
なお、受贈者(贈与時の1月1日において20歳以上の方限定)が、父母や祖母など(直系尊属)から受ける暦年贈与では、「特例税率(軽減税率)」を適用して税額を計算します。
贈与税の計算式
贈与税の速算表(一般税率)
贈与額例別贈与税額早見表(一般税率)
計算式
選択できる 年齢条件(贈与年1月1日現在の年齢) 贈与者 60歳以上の親 受贈者 20歳以上の推定相続人(子)及び孫 贈与者ごとに制度を選択することができる
相続税の計算 贈与者が亡くなったとき、相続財産の価額に贈与財産の価額(贈与時価額)を加算して相続税額を計算する。既に支払った贈与税額を相続税額から控除する。控除しきれない金額は還付される。
「住宅取得などのための資金」の贈与を受けた時、次の特例を適用することができます。
相続時精算課税選択の特例
住宅資金非課税特例 直系尊属から「住宅取得などのための資金」の贈与を受けたときは、住宅取得等資金のうち一定金額について贈与税が非課税となります。
結婚(届け)してから20年以上たった夫婦に対する恩典として、配偶者に居住用財産を贈与しても2000万円(基礎控除も含むと2110万円)までは贈与税がかかりません。不動産取得税は課税されます。
具体的には、自宅敷地の相続税評価額(路線価又は倍率方式)と建物の相続税評価額(固定資産課税通知書)を調べます。 仮に、相続税評価額合計が5000万円の場合、持分5分の2だけ贈与を受けることも可能ですし、土地だけ、あるいは土地建物の一部持分だけでもよいでしょう。 相続税評価額が2000万円以下であれば、全部の贈与を受けても良いし、持分2分の1にとどめるなど、柔軟に贈与内容を決めることができます。
贈与内容が合意できたら、贈与に基づく所有権移転登記をし、翌年の2月1日から3月15日までに配偶者控除を受けるための税務申告をして下さい。
その時の添付書類です。 (贈与の日から10日経過日以後に作成のもの) ・贈与を受けた不動産の登記簿謄本 ・住民票 (居住後に作成のもの)
自宅などの居住用財産を生前に贈与するときに、贈与税の負担が軽減される便利な特例ですが、遺言と異なり一度贈与を実行すると、贈与者の都合で取消すことができません。 居住用財産全部を配偶者に贈与するときは、夫婦の信頼関係が今後も末永く続くことをお互いに確かめたうえで贈与してください。
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贈与する人が死亡したら、その効力が生ずるという贈与契約(合意)を結ぶことができます(民法554条)。民法の遺言に関する条項が死因贈与契約の場合は多く準用されます。 ただし、遺言の効力、方式、承認・放棄に関しての規定は準用されないと解釈されます。 死因贈与契約に基づいて不動産につき所有権移転の仮登記ができるメリットがあります。贈与者からの取消しは、やむをえない理由がないと、制限を受ける場合があり(最高裁昭和57.4.30判決)、受贈者の地位が遺言に比べ安定化することがあります。 遺言では仮登記はできません。 死因贈与は贈与税ではなく相続税の対象となります。
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