遺言

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相続争いを防ぐために遺言を

誰に何を相続させるのか、遺言書を作成して指定することができます。

通常、死亡後に、遺産をどう分割するか相続人間で話し合いが行われるわけですが、お互いに利益相反しますので、必ずしもスムーズに話し合いがまとまるとは限りません。

 

遺言書は何度でも作成でき、日付の新しいものが優先しますので、相続人との関係に変化が生じた時、あるいはご自分の気持ちが変わっただけで、前の遺言書を取消す遺言をすることができます。

 

 子供がいないご夫婦は遺言を

子供がいないご夫婦の一方が亡くなったとき、相続人は配偶者と父母(法定相続分3分の1)です。

被相続人に父母(尊属)がいないときは、相続人は配偶者と被相続人の兄弟姉妹又は甥、姪(法定相続分4分の1)です。

 

遺産のほとんどが自宅で現金預金など分割が容易な遺産が少ない場合、遺産分割協議に他の相続人全員から同意をもらうのが困難なときがあります。法律上保護される遺留分は父母にはありますが(6分の1)、兄弟等にはありません。

 

自宅全部が夫名義で子供がいない場合、夫に遺言を作成してもらうか、2000万円の特別控除を利用して夫婦間贈与(所有権移転登記)をしてもらうと安心です。

贈与ページを参照ください。

 

 再婚の場合はお互いに遺言を

後妻側と前妻の双方に子がいると、配偶者及び子全員が相続人となり、ときに相続争いは熾烈となることがあります。

後夫と前夫の子との争いも同じです。

日頃の交流がない親族間では、一度関係がこじれると、関係修復をするのが困難です。そうなると、かんたんに遺産分割の合意ができません。

 

遺言が無いと、相続人全員の合意ができるまで、相続財産は共同管理状態となり、権利の帰属が確定しません。

 

共同で遺言書をつくることは許されないので、夫婦が別々に、遺言書を作成し合うことをお勧めします。

 

遺言は何度でも作成でき、日付が新しいものが優先されます。

新しい遺言が古い遺言の内容と抵触するときは、その抵触する部分について、古い遺言は撤回したものとみなされます。 

 

 相続人のいない方は遺言を

相続人がいない場合、被相続人と特別の縁故があった者に、清算後の相続財産の全部または一部を家庭裁判所が与える制度があります(民法958条の3)。

 

特別縁故者とは、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者などをいいます。特別縁故者に与えられず残った相続財産は国庫に入ります(民法959条)。

子、配偶者、親、兄弟(甥・姪)もいない方は、法定相続人がいないことになります。

 

遺言の内容を実現させるために、必要な行為をする権限を持つ者を遺言執行者といいます。遺言書で遺言執行者を指定すれば、遺産を誰に遺贈し、どのような団体に寄付するか、ご自分の希望を執行者が代わって実現させることができます。

 

  

 分割しにくい財産をお持ちの方は遺言を

現金・預貯金、上場株式などの有価証券は比較的分割に適しています。

一方、自宅(土地・建物)が財産の大部分で、かつ相続人の一部(例えば、妻)が同居している場合、他の相続人の法定相続分を尊重して、遺産を分割することは困難でしょう。

同居している人が自宅を相続するとの分割合意が容易にできる信頼関係があれば問題ありませんが、相続が発生すると相続人は配偶者などの影響を強く受けますので、予定通りにスムーズな分割協議が成立するとは限りません。

長年苦労を共にしてきた妻が、夫に万一のことがあっても、自宅で安心して暮らせるように、妻が自宅(土地・建物)を相続し、その他の財産はできるだけ他の相続人が相続することを指定する遺言を行うことが望ましいと思います。

遺言において、一部の相続人の遺留分(原則法定相続分の半分)を侵害するときは、その遺言をなぜ書くのか心情を付言し、相続人へ理解を要請することも考えられます。

 

生前贈与の検討

また、結婚(正式な婚姻)してから20年以上の配偶者へは、贈与税の配偶者特別控除(2000万円非課税)の制度を利用して、居住用財産(不動産やその取得資金)を生前贈与することもできますので検討をしてみてください。

贈与ページを参照ください。

 

 将来が心配な家族のいる方は遺言を 

病気・障害など、自分に万一の事があると、将来が心配な家族がいる方は、確実に相続財産を相続できるよう遺言することをおすすめします。

 

また、その家族の面倒を見てもらう事を条件に、親族など信頼できる人に、財産の一部を遺贈(負担付遺贈)をすることも検討してください。

 

負担付遺贈を受けた人が、その負担した義務を行わないときは、相続人又は遺言執行者は履行の催告や、その催告後も履行がないときは、家庭裁判所への遺言の取消請求ができます。

 

その他にも、自分に対して暴力・暴言を繰り返す家族がいる場合、遺言でその人を相続人から廃除して財産を相続させないようにすることも可能です。

 

婚外子がいる方は、遺言でその子を認知して相続人に加えることも、認知しないで財産を遺贈することもできます。 

 

遺言の種類

よく使われる遺言では、自筆証書遺言公正証書遺言があります。

 

自筆証書遺言では、遺言書作成者が原則として全文(財産目録は自筆でなくても良いが、方式が規定されている)、日付、署名をペンなどで自筆したうえ、印鑑の押印が必要です。

遺言の内容について、死後に説明することができませんから、明確な表現で遺言書を作成しないと、後々解釈をめぐる争いが生じかねません。

訂正方法も法定されてますので、注意が必要です。

公正証書遺言に比べ、費用が安く作成できるという魅力が自筆証書遺言にはありますが、文案は慎重に検討してください。

自筆証書遺言書を作成したら、一番相続(遺贈)分の多くなる推定相続人(受遺者)へ預け保管してもらうのが安全です。

 

以下は、自筆証書と公正証書の各遺言の注意点と特徴です。

 

 自筆証書遺言の注意点

  ・本人の筆跡か争われやすい

  ・方式違反で無効になるおそれがある

  ・記載ミス訂正の方式が定められている

  ・紛失しやすい

  ・被相続人が死亡した後、家庭裁判所に検認の申立をしなければならない

 

 公正証書遺言の特徴

・公証人と証人2名の立会いがあるため、争われにくい

・公証人役場で120歳まで遺言を保存してくれる

・一番多く遺産をもらう相続人へ公正証書遺言の謄本を預けるとなお良い

・検認の手続はいらない

・自筆証書遺言より費用がかかる

・証人になれる人に制限がある(配偶者、息子、その妻などはなれない)

・公証役場へ出向くことができない人へは、公証人が病院、自宅などへ出張してくれる  

 遺言の内容

民法で規定する遺言の主な内容には、相続分の指定や遺産分割の方法の指定、遺言執行者の指定、認知、推定相続人の廃除(その取消)、財産の処分、祭祀主催者の指定などがあります。

 

民法で規定するもの以外でも、お葬式のこと、自分の死後どのようにしてほしいか、といった精神的なことを書いた遺言もあります。法的効力はなくても遺言者の意思を尊重してもらえるはずです。

 

不動産は、預金と違い、分けることが難しいものです複数土地の筆数がある場合は、誰がどの土地と指定した方がいいでしょう。

一筆の土地を分ける場合は図面を付けるなどして、誰がどの部分と指定するか、あるいは全体を売却してその代金をこのように分けるという指定をする方がよいでしょう。

 

墓や仏壇を守りたい、法事も続けてほしいと思う場合には、先祖の祭祀を誰が主催するかを指定しておくほうが争いがなくなるでしょう。

 

遺言で誰か一人に相続させると書いても、他の相続人には遺留分があります。完全に争いが起こらないようにすると、子2人が相続人の場合その法定相続分(2分の1)の半分となる遺留分(4分の1)に配慮して相続分を指定するとよいでしょう。

 

遺留分の争いを覚悟のうえで、一人にすべてを相続させるという遺言を書くこともできます。

 

遺留分減殺請求権は自分の遺留分が侵害されたことを知った時から1年(相続開始から10年)で時効消滅してしまいます。